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◆ 砂埃の中の証 2008/07/23(水)
7月23日(水) ナゴヤドーム ● 中日 3 − 8 広島 「砂埃の中の証」 ![]() 毎年、高校・大学・社会人などから何十人もの投手がプロ野球の舞台に足を踏み入れるが、最初に掲げる目標は皆同じである。 「プロでまず1勝。」 この目標を持たない投手はいない。 自分の力が果たしてプロの世界でどこまで通用するのか? それを確認、実感するためにもまず「1勝」を手にしたい。投手ならば誰でもそう考える。 1勝を手にすることで初めて「プロの証」を与えられるような、そんな感覚なのだと思う。 しかし、その「1勝」を手にすることなくユニフォームを脱ぐ投手も多い。 未勝利のまま現役生活を終えたドラゴンズの投手を数えてみると、ここ最近90年以降から数えてみても18人。 平田洋・金森・福沢・洗平、最近で言うなら樋口など、ドラフトの上位指名で獲得した投手ですら「1勝」に手が届かずグラウンドを去るのだ。 そう考えてみると投手にとってのプロ1勝というものは、 入団後に誰しも掲げる「最初の目標」であると共に、最も乗り越えることが困難な「最大の目標」なのだと思う。 そんな最大にして最小の願いを佐藤亮太は今日叶えようとしていた。 3年目にして廻ってきたプロ入り初勝利のチャンス。その権利まであと打者1人、あと1球・・・ しかし、野球の神様は佐藤亮太に無情とも思える結末を用意した。 5回表2アウト。初勝利を賭けてアレックスに投じた第5球目の勝負球はスライダーだった。 入団会見の時に「得意球はスライダーです。」と語っていたように、彼が野球人生の中で生命線として使ってきたフィニッシュボールだ。 その一球は対角線から右打者の膝下にスッと消えていくまさにこの日一番、いや人生一番のスライダーだったに違いない。 アレックスのバットは空を斬りスイングアウト、チェンジ。 勝利投手の権利が発生したその瞬間、佐藤はグラブと左拳をグッと握り締め、吼えた。 悲願の1勝へ向けて。その物静かな風貌からは想像できないほど全身で喜びを表現してみせた。 ![]() しかし・・・三振でチェンジかと思われたが、主審の判定はファール。 ボールがアレックスのバットに当たり谷繁の捕球前にワンバウンドしたと判定されたのだ。 一度掴んだはずの勝利投手の権利。渾身のガッツポーズ。そして人生最高の一球は、一転”無かったこと”に。 これで佐藤亮太の緊張の糸はプツリと切れアレックスにはフォアボール、 さらに栗原には痛恨の一発を食らうなど、一度切れてしまった緊張の糸はもう二度ともとに戻ることは無かった。 ![]() 砂埃の中に消えた幻の一勝・・・。 あのシーンを今一度考えてみる。 あの時、野球の神が佐藤亮太に下した運命は無情だったのだろうか? ・・・いや、真っ当だ。 「プロの証」というものは、ファールと判定され仕切り直しとなった”あの場面”を抑えてこそ手に出来るものだと思う。 それほど1勝は重く尊いものなのだ。運が無かったのではない。一番の敗因は実力が無かったから。それに尽きる。 |
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