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◆ プロの自我 2008/10/22(水)
10月22日(水) 東京ドーム ○ 中日 4 − 3 巨人 「プロの自我」 プロ野球選手の超人的な素晴らしいプレーを目にするたびにいつも同じことを思う。 「どうしたらこんな事が出来るんだろう?」 「どういう経緯でこんな領域に辿りつけるのだろう?」 その永遠の謎の答えとなる手掛かりを、今日の試合でドラゴンズの選手が教えてくれたように思う。 答えの手掛かりは二つ。究極の舞台で見せる選手のイマジネーションとコンセントレーション。 つまり、”想像力”と”集中力”だ。 この二つの能力が極限の舞台で研ぎ澄まされた瞬間、奇跡的な力が生み出されるのだと思う。 ■荒木の場合■ ![]() 5回表1アウト1塁2塁。この場面で荒木が奇跡的な走塁を見せた。 ウッズが引っ掛けたショートゴロを坂本がさばいてフォースプレーを狙いすかさずセカンドへ送球。 しかし、荒木の好スタートによりセカンドはセーフ。 ウッズの平凡なセカンドゴロは、荒木神懸り的な走塁能力によってヒットと同価値のものに姿を変えた。 この奇跡的なプレーは、まさに上記で挙げた「想像力」と「集中力」の賜物なのだと思う。 昨年のクライマックスシリーズの第2戦でも全く同じシーンがあった。 この荒木の走塁はもちろん偶然ではない。荒木はこういうケースを想定して想像し、集中力を高め、常に1塁ベース上で狙っているのだ。 だからこそ起きるプレーであり、すべてが最高のバランスで整ってこそ生まれる走塁である。 ■井端の場合■ ![]() 8回ウラ1アウト満塁。この場面で井端は奇跡的な守備を見せた。 同点、満塁。もちろん内野はバックホーム最優先の極端な前進守備陣形を選択せざるをえないケース。 内野手はゴロを捕球した瞬間にオールバックホーム。いわばそのために作られている陣形だ。 捕球してすぐさまバックホーム。当然そのイメージを想像しながら内野手は構える訳だが、 しかし、ここで井端は守備陣形の概念をぶっ壊すほどの神業を披露する。 まずは高橋のセンター前に抜けそうな当たりを身体を目一杯まで伸ばして捕球。 そして打球に懸命に喰らいつきながらもその刹那に頭の中では、「この体勢からバックホームは無理」と判断し、セカンドゲッツーのイメージに即座に切り替える。 だが、セカンドゲッツーを狙おうにも、セカンド荒木も前進守備の隊形を取っているためトスする相手がいない。 「幸い捕球した位置がベースに近い・・」 「もうオレが自分で入るしかない・・・」 「そしてベースを踏みながら素早くファーストに送球する」 「・・・・・いける!」 ![]() 井端はたった0.1秒あるかないかのこの瞬間に一瞬でをプレーを想像し、 そして集中力と想像力で生み出された神懸り的なプレーを創造したのだ。 ■中村紀の場合■ ![]() 9回表2アウト1、3塁。この場面で中村紀は奇跡的なバッティングを見せた。 クルーンの150キロ後半のストレートを待ちながらも、投じられたフォークボールに対して見事に反応した。 私が考えるに、クルーンというピッチャーは3種類のフィニッシュボールを持っていると思う。 一つはもちろん150キロ後半のストレート。二つ目は急角度で落ちる落差のあるフォークボール。 さて、では3つ目のフィニッシュボール。みなさんは何だと思うだろうか? この3つ目のフィニッシュボールは打者が絶対に待てないボール。絶対に絞りきれないボール。まさに魔球である。 その3つ目のフィニッシュボールとは”抜けたフォークボール”だ。 ![]() クルーンという投手は日本で一番の速球を投げるピッチャーである。 当然バッターはこの速球に対応するために早い始動を行わなければならない。 しかし、ここで打者を幻惑するのが第2のフィニッシュボール。フォークボールだ。 ストレートと同じような軌道で迫ってきてギリギリでストーンと落ちる。 クルーンはこの二つを駆使した投球をしてくるため、どっちつかずの中途半端な心構えでは絶対に打てない。 となると、打者は必然的にストレートかフォークのどちらかにヤマを張る必要がある。 考えうるベストの対応策としては予め150キロ後半のストレートの軌道をイメージしておき、フォークだと判断した瞬間にバットを止める。 これが出来れば苦労は無いのだが、剛速球を前にしてこの対応を実践するには極限の集中力を要する。 ストレートのイメージとフォークのイメージを徹底的に頭の中に叩き込み、クルーンがボールを投じた瞬間に瞬時に判別する。まさに神業が必要だ。 しかし、ここでやっかいなのが先ほど挙げた第3のフィニッシュボール。”抜けたフォーク”である。 ストレートと落差のあるフォークに集中しすぎるがあまり、チェンジアップのような軌道で投じられる抜けたフォークに対しては、一瞬頭がパニックになり、身体が固まってしまうのだ。 今日の試合でも和田が2球目のど真ん中のフォークを見逃してしまったというシーンがあった。 これこそが予期せぬ想定外のボール。集中すればするほど準備すればするほど足元を掬われるという魔球だ。 この球を待つというのは事実上不可能に近いと言える。 しかし、中村紀は打った。 一瞬体勢を崩されかけたにも関わらず、懸命に腕を伸ばしバットの先に辛うじて乗せ切った。 「ストレートを待っていた」と本人が語っているのを聞いてもわかるように、”抜けたフォーク”を全く想定してなかったにも関わらず打ったのだ。 なぜ・・? これはもはや中村紀の極限の集中力が無意識のうちに身体を動かしたとしか説明がつかない。 おそらく想像力と集中力が極限に達すると、人間に不可能はなくなるという事なのだろう。 プロフェッショナルプレーヤーは、日頃の努力はもちろんのこと「想像」と「集中」が研ぎ澄まされることよって限界を超えた奇跡の領域に触れることが出来る。 今日の試合でドラゴンズは一つの答えを示してくれたように思う。 これこそが私が求めている選手の「自我」である。 こういう野球を出来る選手が負ける訳が無い。こういう選手がいるチームが負ける訳が無い。 今日のような試合をやってくれるのならば、私はいくら払ってでも観たい。それぐらい価値がある。 何も怖いものはない自信を持って明日の試合へ望もう。願わくばこれが続いてくれることを祈って。 |
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